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【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第42話 流氷上の釣り!

2012.01.21

この時期のサハリンは、流氷上での釣りが大人気だ。
 キュウリ魚を狙った穴釣りで、土日は海岸の道路が数キロにわたって駐車車両で一杯になる。
家族連れや友達同士、時にお一人様(本格派)と多様な釣りのスタイルが氷上に展開する。
 形態は日本のワカサギ釣りに似ている。ドリルで氷に穴を開け、いくつものハリスを付けたラインを下ろす。竿は使わず手で軽くしゃくりながら、重くなると一気に引き上げる。何匹ものキュウリ魚が上がってくる。技術は要らないので子供達でも簡単に釣っている。
 釣り上げた獲物は足下に転がしておくと1分ほどで完全凍結である。(釣果は持ち帰り、干乾とする。ビールとの相性は抜群である。コーリュシカの名前で市場でも買うことが出来る。)

その昔は市民の冬場の貴重な淡泊源の確保として生活に密着した漁の趣があったが、今ではレジャーの意味合いが強まった。テントやストーブ、フライパンなどを持込み、釣った先からムニエルで熱々をいただく。もちろんウオトカは完全100%標準装備だ。
 お日様が出て、風がなければ-20度くらいでも寒さはそれほど苦にならない。冬のピクニックとしてとても楽しいアクティビティーである。

しかし、少々ヤバイ時もある。先ずはこのピクニックの場所は文字通りに「流氷(流れる氷)上であること。」を忘れてはならない。これは風や海流で場所そのものが動くことを意味する。数年前、陸側から強い風が吹き付け流氷域全体が大きく沖に流された。日曜日ということもあって多くの市民を乗せたままである。ロシア国家非常事態省は航空レスキューを発動しヘリコプターをもって全員を無事に回収した。膨大な人数である。新聞やTVで当時大きく報道された。
 もう一つは、流氷原は広大な氷原であること。吹雪かれると容易にホワイトアウト(視程喪失)となる。”90年代に吹雪によって災害と言っていいほどの被害が出た。氷原上で視界を無くした多くの市民が陸地から僅か数百メートルを戻ることが出来ず凍死した。運良く車に戻ることが出来た市民も大雪と吹きだまりで車を動かせず車中で多くの方が無くなった・・。

しかしながら、この流氷上の釣りは毎年の風物詩としてつづけられている。当局に禁止されることもなく、また誰からも「危険だ。」とか「止めろ。」とかの非難の声や異議が唱えられることもない。「自分のことは自分で考えろ!」である。そして行政も肝が決まっている。「困ったら言え!メンドくさいけど助けに行ってやる。」

ロシアは本当に大人の国であると思う。・・・こういったお国柄は心底うらやましいと思う。

(photo by M・Bugaev)

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