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RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第2話 列 車

2004.04.21

なんとなく郷愁を誘うタイトルと思う。しかしここでは次のサブタイトルで話を進めたい。

<<一等コンパートメントの恐怖>>

網袋に入ったみかん、ゆで卵と塩、お茶。これが列車の旅に欠かせないアイテムであると私は長く信じ人生を生きてきた。ロシアは違った。当たり前であるが彼らのアイテムの前に、越えられない「食文化の壁」と、世界一と思われる「もてなしの心」に触れ、それが4名用個室コンパートメントという閉鎖された空間で繰り広げられ、堪能することとなった。

彼らの列車の旅アイテムは、ウオトカ、黒パン、きゅうり、トマト、サラミソーセージ、そして主役のサーラだ!主役の「サーラ」をご紹介しよう。 紹介といってもとても単純なものだ。「豚の脂身のみの塩漬け。」以上!
サイズは驚きのレンガサイズ。小さいものでもルービックキューブ大だ。
これを彼らはとても大事そうにバッグにいれ愛しそうにほんの少しずつをナイフで削りながら食する。至福の瞬間だと彼らは言う。そして彼らはロシア人だ。世界一のもてなし文化を待つ彼らは、席を同じくする同乗者へ至福を分かち合うことを決して忘れない! それがたとえ外国人であってもだ。
彼らはこの世界最高の珍味「サーラ」を味わうことができる瞬間こそが人生だ!と確信している。たとえ、「私はベジタリアンだ。」と叫んでも決して逃れることはできないだろう。
彼らは言う。「神でもサーラの魅力に抗うことはできない。赦される。」そして言う「喰え。」
イメージしていただきたい。4名用コンパートメントに3人のロシア人、そして気の弱い一人の日本人。
この状況で神も抗うことができないとされるサーラを拒否することがはたしてできるであろうか。
サーラは男の手作り!が原則とされる。一人前の男の条件とまで言われ、その出来栄えの評価によっては乱闘もありうる大変緊張感のある珍味だ。

 3人の男全員がバッグから新聞紙にくるんだブツを取り出した。ウオトカの栓が開く。
黒パンが用意され、きゅうりが切られた。そして主役に厳かにナイフが入れられた。
3人は心持ち厚く切ったサーラを黒パンにのせ、同時に私に差し出した。口元には柔和な笑みが浮かべられていたが目は笑っていなかった。
大和魂を見せる瞬間が来たと私は思った。3切れとも味わうように呑み込み、社交性に富む私は一言「うむ!ハラショー。」
彼らは満面に笑みを浮かべた。
そして今度はさらに厚く切り始めたのだった。私は気が遠くなった。
目的地まであと二日。そして最終兵器のウオトカの出番はこれからだった。
楽しい列車の旅はまだ始まったばかりだ。

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