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旅のコラム

第37話 勲六等紫綬褒章モン。パンク修理「大技。」

2010.03.13

アカデミー賞でも、トニー賞でもレコード大賞でも何でもいい!とにかく賞をあげたい。
パンクにまつわる話でもう一点ご紹介したい。驚きの秘義であり、ロシア人の「人間としての性能の高さ。」を実感させられたエピソードである。
【チューブレスタイヤのホイール組み換え On The Road!】
車が趣味であったり、修理を少しかじられている方ならこのタイトルの持つ意味をすぐ理解いただけるであろう。そして間髪を入れず「それは不可能だ!」と断言できるはずだ。
私も当時その場にあって途方に暮れたことを思い出す。
「たかがパンク」と軽くいなせるような状態にないのがロシアの荒野だ。この時のパンクは穴ではなかった。バースト(破裂)に近いタイヤのショルダー部分が少し(4㎝~5㎝)裂けたような状態であり、修理不可能なパンクだった。廃棄である。これはいかなロシア人でもどうにもならない。チューブ式なら幾分チャンスは残されているが、チューブレスは不可能だ。しかし彼らの表情に慌てたそぶりは少しもなかった。
「夜までには1台くらい通りかかる車はある。心配ない。」と言った。
私は、スペアタイヤを借りるか街場への救援メッセージを託すんだろうと思った。(しかしその程度のことだったらコラムには書いていない。)

しばらくすると1台の車が通りかかった。
ドライバー同志が何やら二言三言言葉を交わしている。どうやらスペアタイヤをもらったようだ。しか~し、もらったスペアタイヤは何とパンクしている。そしてタイヤのサイズは合致しているのだがホイールのハブボルトの数が四穴と六穴でまったく合わない。自分としては全くあり得ないやり取りに思えた。正直に言おう「ロシア人ってバカなんじゃないか?」がその時の率直な感想だ。(1時間後に自分のノータリンさを思い知らされる時が来るとはその時全く予想だにしていなかった。)

日本人よ刮目せよ!
 ドライバーは2本のパンクしたタイヤを道に並べると、車でタイヤを踏ませてビードを落とした。タイヤレバーでホイールからタイヤを外す。合わないホイールは相手に返し、バーストしたタイヤは路肩に放り投げた。残ったのは軽微なパンクタイヤと自車両のホイールだ。
ロシア人はタイヤレバーでパンクタイヤをホイールに組み込んだ。
しかし、それからとりかかる作業は私が知る限り、強力なエアコンプレッサーと特殊工具が絶対に必要である。「チューブレスタイヤのビードをあげるには構造的に物理的に科学的に生物学的に遺伝子学的に合理的に、もう~とにかく絶対必要である!」そしてシベリアの路上にそんなものは絶対にない!私はもう一度「ロシア人ってアホなんじゃないか?」と思った。
しかし、ここからがロシア人の天才ぶりだ!
ドライバーは組み入れたタイヤのビード部分にガソリンを回し掛けた。何の躊躇もなく火をつける。ドライバーは燃え上がるタイヤを20秒ほど見つめていた。私は「な~にやってんだ、こいつら~?」とほとんどあきれ顔だったろうと思う。
そして、コレだ!! 1,2,3.
ドライバーがいきなりタイヤを踏みつけた!
その瞬間!チューブレスタイヤは「ボン!」という大音響とともに見事両サイドのビードを上げた。
 (ビード部分から滴り落ちたガソリンはタイヤ内部で気化する。外側に火を付けることで急激に温められたタイヤはその気化を促進しタイヤ内部には一触即発の引火性ガスが充満する。踏みつけられたことによりタイヤ内部の引火性ガスが外の燃えさかる火をタイヤ内部に誘引しタイヤ内部で爆発する。)
・・・・・・・・・・・それは・・・化学だった。

ドライバーは小さなパンク穴をふさぎ、少し空気を入れて車に装着した。この日我々は無事目的地に着いた。

以来、私は自身のノータリンさと人間の性能といった部分では全くと言っていいほどにたよりにならない低性能であることを自覚しながら今を生きている。
ロシア人に不可能はない!もし地球人が遠い未来、深宇宙に進出するとき、その第1号は絶対ロシア人でなければならないと思う。

文中、ドライバーとして記述したがプロドライバーではない。私の信頼する友人である。彼は今、公認会計士として活躍している。

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