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【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第38話 氷上の焚き火

2010.10.09

「極東ロシアの冬の訪れは早く、そして厳しく、長い。」(ちょっとそれっぽい書き出しでロシアっぽい?)
しかしながら、彼らにとっては当たり前であり毎年繰り返される日常の延長と言ってもいいのだろう。日本人が考えるほどにはその厳しさを感じていないように思う。
それ故か冬のレジャーとして釣りが人気だ。厳冬期にもかかわらず!である。

もちろんハンティングはベストシーズンと言えるだろう。毛皮も肉も最高の時期を迎える。
 ロシアの男達は連れだって氷原や雪原にスノーモービルでぶっ飛んでいく。たいした装備も持たず本当に「釣り竿片手に鉄砲担いで、」くらいのことで冬のシベリアを行く。小心者から見るとその装備を見ただけで凍死しそうな感じだ。

 その薄ら寒い装備の中で異彩を放ち、且つ重要なモノが1点ある。「エンジンチェーンソー。」だ。スノーモービルに牽引されたそりの中に鍋釜と一緒に放り込んである。他にたいしたものは積んでいない。

 この時期の釣り場は、夏であれば湿地ないし湖沼、河川と言われる場所である。厳冬期はもちろん全面結氷で氷と雪の世界である。ほとんどでがタイガの奥に点在している。ハンティングの場合はそのタイガのなかで主に罠猟となる。
スノーモービルでタイガを行くと必ず太く大きな風倒木に何度も出くわす。チェーンソーの出番である。男達は風到木を40cmから60cmくらいの間隔で玉切りにし、牽引ソリに積めるだけ積む。
釣り場に到着すると川か湖と思われる氷原に穴を開け、早速穴釣りだ。
一人の男が玉切り材を下ろし、氷原に縦に立てた状態で並べチェーンソーを手にする。
そして材に上から3分の1程度に十文字の切り込みを入れた。そのうちの1本を雪を払った氷原に立て、モービルの予備燃料から大さじ一杯程度のガソリンを取り、切り込みの中心に流し入れる。火を点けると特大キャンドルになった。(日本でもウインターリゾートの洒落たホテルに行くと玄関あたりに細く小さいのを時折見受ける。)
しかし、天才ロシア人である。たかがキャンドルごときが目的ではない!太いことには意味があった!
実は、「煮炊き用の特製ストーブ」であった。鍋に雪を山盛りに詰め込みこの特製ストーブの上に載せる。瞬く間にお湯が沸きティータイムである。(燃えている部分は高さがあるため置いた所の氷は溶けない。夕食はそのままジャガイモと釣れた魚でタイガ料理「ラグー」である。もちろんウオトカは欠かせない。
鍋に接している材の上面はなかなか燃えない。安定性が保たれたまま長時間に渡って使える。キャンドル・暖房・煮炊き用ストーブとわずか1本の材で3役。しかも完璧なエコ!
2本並べればツーバーナー。大人数ででかい鍋の時は3本まとめて使うなんかの大技もある。移動も楽!(制作のこつは氷原で使うときは小口を出来るだけ直角に、雪の深いところでは長めに切って小口は鋭角にし、雪面を踏み固めて叩き込む!)

アメリカ人はコールマンを作った。ロシア人にはそんなモン必要なかった。

日本人は・・・日本人は、「!!プレイステーションを作った!」フィッシングもハンティングもお家の中で思いのままだ!どうだ-!。・・・ウムムム、、。
(越後三面山人衆、奥会津猟師集団、そして本家秋田阿仁マタギ衆に期待したい。もはやこの分野で極東ロシア人に対抗できる日本人は彼らだけである。何とかMade in Japanの技術・知恵・伝統をつないでもらいたい。)

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