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旅のコラム

第5話 ロシアンスタイルのサウナ:バーニャ 最終話

2004.10.17

シベリア、タイガ、ツンドラ世界は本当に魅力的だ。日本の箱庭のようなアウトドアフィールドとくらべると圧倒的な存在感がありその広大さは絶望的でもある。
しかしもし傍らにロシア人の友人がいたとしたなら、何も心配することはない。
その絶望的な広さは各種のエンターティメントを繰り広げる無限のステージとなる。
日本人が過去持っていた、そして今は継承されなくなった生きるための知恵がここロシアではまだ父から子へと確実に受け継がれている。

≪川原に忽然と出現したバーニャ≫
 まだ暗いうちに街場からウラルで出発した。
蝦夷雷鳥を求めて山、谷、川、沢、湿地帯を8時間ほど走ったであろうか、およそ車が走れるような場所ではなかったが強力な車輌と、朝昇龍のようなロシア人ドライバーの前に苛酷な自然もいやいやながらその扉を開けてくれた。
(巨大な車輌で木を薙ぎ倒し、太い木は切り倒しと「開けてくれた」というより「こじ開けた」が正しいかもしれない。自然保護を唱える人なら間違いなく卒倒するだろう。)
車は何本目かの深く大きな川を渡渉し終わった後、大きな渓谷の開けた川原に止まった。今日のベースキャンプとなる所のようだ。「人跡未踏」の言葉が似合う場所だった。
チームのロシア人たちは手際よく、ある者はテントを張り、ある者はキッチンスペースを確保しと忙しく働いていた。
そんな中一人の若手が川原でもくもくと石を運んでいた。大きさはメロンパンくらいだろうか、川に近いところで直径1mくらいのスペースに石をピラミッドのように積んでいく、彼を手伝いながら「これはいったいなんだ?」と聞いた。
彼は「バーニャだ。」と確かに言ったが私はそのとき理解できなかった。
なぜならこんな山の中でサウナを意味する言葉が出てくるとは夢にも思わなかったからだ。
そのときは「多分バーニャには何か他の意味があるのだろう」と聞き返すことなく作業を続けた。
ピラミッドの高さが1mを超えたところで彼は今度は巨大な流木をチェーンソーで切りながら薪割りを始めた、薪割りは私がやる、と交代を申し出ると彼は例のピラミッドを中心に流木で4本の柱を立て、石のピラミッド覆うように大量の薪を立て掛けていった。車から予備燃料の軽油を持ち出し火をつける。
ピラミッドはとたんに高さ3mくらいの炎をあげ盛大に燃え盛った。私はただ呆然とその炎を眺め「ロシアの焚き火はでっかいなあ~。」とのんびりした面持ちだった。
焚き火は火を弱められることなく3時間ほども続けられただろうか、手の空いたロシア人メンバーが動き始めた。
焚き火から熾きをはずし、切り株と何本かの流木を並べる、4本の柱に3枚の天幕で四角いテントを設営した。もちろんテントの中には熱せられた石のピラミッドがある。
彼は川からバケツで水を運びテントの中のピラミッドにぶっかけた。盛大な音と蒸気が巻き上がる。彼はテントを閉めタバコに火をつけながら服を脱ぎ始めたのであった。
見ると皆素っ裸になりテントに入っていく。テントの中から雄たけびが上がる!「ハラショー!」私もすぐに素っ裸になり仲間入りをした。
中にはウッディな香りの切り株の椅子が、そして足置きとしての流木が用意され完璧なサウナが出来上がっていた。たっぷり汗をかくとテントから飛び出し川に飛び込む。そして雄たけび!「オーチン ハラショー!」
私は満天の星を仰ぎながら思った。
驚きと心からの敬意を込めて「こいつらは天才だ!」と。
~おわり~

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