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【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第9話 ある日の食料計画

2005.08.04

シベリア奥地のタイガへ赴く仕事だった。
3週間の日程で確か青森港から2泊3日、台風の中の船旅だったと記憶している。
上陸港はウラジオストック。そこから飛行機で5時間、更に車で10時間、往路だけで4日もかかった長旅だ。ある。

現地ではもちろん全日程幕営のため日本出発前に食料計画をたて野営装備一式、米・味噌・醤油・嗜好品にと万端整え、まるで登山隊のような準備であった。
しかし一点だけ用意出来ないものがあった。 「生鮮食料品」である。
日本から持参するとなると梱包・運搬・保存・保管で大がかりなこととなり現実的でなく、事前に現地で用意してもらうのが最良であると考えた。
いつものごとく現地パートナーに出発直前テレックスを打った。
「装備・食料計画は万全だ。心配無用。しかし生鮮食料品のみ持参できない。協力請う。」 
パートナーからの返信はたった一行、「委細了解。」
そうして我々は出発したのであった。
現地到着後は事前準備が功を奏し、簡単な申し合わせと人員の確認を行いすぐ出発となった。
もちろん足はシベリアンビークルの王者、巨大な6輪駆動車ウラルである。
車載キャビンは広く、奥には手作りのベッドスペースが設けられいかにも快適そうである。当時の私が札幌で暮らしていたアパートより大きく広かった。
日本から持ち込んだ野営用具一式、食料を積み込んでも充分ゆとりがあった。
全員が乗り込むと出発である。
町外れまで道を行く、山に入って踏み分け道を行く、谷に入っては河を行く。ウラルの通った跡が道となった。
谷あいを行くとき大きなゴロタ石に乗り上げた。
人も荷物も跳びあがりキャビンの中は散々となった。
その時、後方のベッドスペースで声がした、『メェ~~~!』耳を疑ったがあきらかに動物の鳴き声だ。

私はパートナーに山羊でもいるのかと聞いた。彼は『羊だ。』と応え,ベッドスペースの下の空間を指差した。
のぞいて見ると2頭の羊が足を縛られ転がされていた。
私はその瞬間に思い出した!日本を出る直前に打ったテレックス、「生鮮食料品たのむ!」を。
私はこわごわ彼に聞いた、「これは何?」
彼は応えた『ヒツジだ!』『お前は羊を見たことがないのか。』
「ちがう、何故羊が乗ってる!?」
『も~ちろん食うためだ!』
「、、、、、、、、。」
生鮮食料品だった。
— 合掌 —

正直に言おう。「美味かった。」

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