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RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第10話 ホットミール(温食)

2005.08.15

「40度は酒じゃない!40℃は温度じゃない! 400kmは距離じゃない。」
これはロシアを旅するときによく耳にするフレーズだ。ご存知のようにロシアを代表する酒「ウオトカ」はアルコール度数40度、しかしその語源は「お水ちゃん」である。故に40度程度の酒はロシア人にとって「水」の意があり彼らにとってはアルコールの範疇に入っていない。また地球上で極寒-74℃を記録した地を持つロシアでは、たかだか-40℃では気にとめるほどのものではないとなる。
そして東のウラジオストックから西のモスクワまで鉄道延長10,000kmのスケールでは400kmなど日帰り圏で、距離というほどのものではない。、、、、、、、、(おそるべしロシア)そんな大きなロシアである。車で10時間の移動などはいきおい通勤圏といわれかねない。
しかしながらその大きさゆえに車両が往く上でのインフラ整備が全くといっていいほどなされていないのもご当地事情だ。ドライブイン、レストラン、カフェなどはもうちょっとあっていいように思う。
そこで、ない物は無い!とするロシア人の生活の知恵として、「暖かいものが食べたいときは、ロシア人には技がある。
ドライブインのような小癪なものはいらない!」としてご紹介したい。

長距離移動で時間がないと想定されるとき、昼食と夕食は缶詰をベースに用意する。都合のいいことにご当地では肉・魚・豆といった缶詰の種類が豊富で、ありがたいのはおかゆ缶詰まであることだ。このおかゆ缶詰(カーシャという)は「蕎麦の実豚肉和え雑炊」とか「ご飯に牛肉和え雑炊」があり1缶で1食が完結してしまうほど便利で味もそこそこのものである。しかし暖めて食さないと極めて不味い!そこで車で移動しながら昼に夕に暖かくて美味いにするために秘技があみだされた。奥義『爆弾オーブン』である。

朝の出発前、まずは車のボンネットを開ける。ソ連の大型車は何故かV6、V8といったV型エンジンが主流だ。そこで、そのV型となっている谷間に注目する。日本車のように排ガス対策機器やコンピューター、エアコンなどの余計な装飾品で飾り立てられることの無い素のままの谷間は「どうぞいらっしゃい、」位に深く魅力的だ。
ここに件の缶詰を並べるのだ。10個20個は楽に収まる。
ただ順番を間違えてはならない。一番下はおかゆ系、その次は肉・魚系、一番上は豆となる。
積み終えたら、さあ出発だ。
10,000ccに近い排気量が造る熱量は相当のもので、昼時分には熱々の雑炊に、牛缶、豆の水煮がいただける。
昼食が終わったら夕食分の缶詰を積みなおして出発だ!
中途半端なカフェなど要らない。となる。

ここで、「奥義:爆弾オーブン」との名称について解説しよう。
賢明な読者はもうお気づきであろう。このシステムには大きな欠点がある。
温度調整機能が無いのである。
走り始めたらそこはそれロシア人である。昼までぶっ通しで走る。
途中で缶詰を積み変えたりはしない。
時折エンジンルームから爆発音がするが気にしない。
運転席には香ばしい匂いが漂ってくる。
そしてドライバーは言う「そろそろ昼にするか~。」
朝、缶詰を積むとき、歩留まりを考え幾分多めに積むのがコツである。時々豆だけの昼食となることがアル。

ロシア、懐の深さと言おうか、谷間の深さというべきか! いずれにしても深い!

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