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RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第11話 ミリタリーバランス

2005.08.23

いつもロシア人の技に驚かされてばかりである。
しかし今回のコラムは日本企業のある商品が勝利を収めた話である。

秘密兵器。 (防衛機密に類すると考えられる。ココム規制品かもしれない。他言無用!)

トヨタ・ホンダ・ソニー・パナソニック。世界に冠たる日本ブランドである。メードインジャパンの代名詞であり高級品・高性能・高品質が約束されている。自分が造ったわけではないが何故か誇らしい。今回のコラムでは、上記ビッグネームに追加してロシア人を唸らせた一品を紹介したい。

 — (有)クローバー — 神奈川県下の会社である。
多分大方の方がご存知ない会社と思う。(クローバーの関係者の方がもし見ていたらごめんなさい。)
しかし、その会社がデリバリーする商品はほとんどの方が目にしているはずだ。
商品名:クローバー ジャズポップコーン。(商品名を知っている人も多分いないだろう。北海道の一部ではサカのOEMになっているときがある)
「アルミフォイルと針金で造られたフライパン型の容器にポップコーンの素と固形化された油脂がセロハン状のもので密封されたもの。」との説明で見当がつくであろうか?
スーパーやコンビニ、100円ショップの駄菓子コーナーでよく売られている。
実はこれこそが、私見ではあるが、わが国に対する領空侵犯を激減させるに一役買ったといって過言ではない偉大なメードインジャパンである。と私は勝手に思っている。

私個人はリゾート、シティ派と自認しているが、何故か仕事の依頼はそのほとんどがロシア極東のアウトドアである。
しかも人跡未踏の荒野が多く一旦アプローチしてしまうと補給不可!とか、エスケープルートなしとかの極めて不幸な場所ばかりのような気がする。(例えばこんなところ→)そしてそんな場所への「関所」は例外なく軍隊が管理している。
当然入域許可証は持参するが、変化の少ない駐屯地に永く勤務する彼らはいろいろ難癖をつけたりで、ひと時の非日常を楽しんでしまう。

こちらも想定内の出来事なのでお付き合いをさせていただくが、結果「まっ、一晩泊ってけや!」となる。
当然ウオトカの出番である、そしてここでメードインジャパン:有限会社クローバーが登場する。ジャズポップコーンだ。

プリムスのガスをセットし司令官にジャズポップコーンを渡す。
司令官も副官も、つまみといえばキューリかサラミの世界からまさに解放される瞬間だ。司令官は不思議そうなまなざしでポップコーンを火の上で振り続ける。ほどなくポン、パンと弾け始めるコーンはロシア軍幹部を驚かしパッケージのセロハンを膨らませながら香ばしい匂いを振りまく。
やがて焦げ臭い匂いと共に熱々の出来立てポップコーンの出現である。

ロシア軍が日本のその国力に驚嘆する瞬間である。

しかし、これは序章だ、司令官のポップコーンは3分の1が焦げている。
そこですかさず副官に二つめのポップコーンを渡しトライさせる。副官は司令官の失敗を見た後なので上手に煎りあげる。皆の視線が集まる中、出来上がりは完璧だ。賞賛の拍手があがり副官の評価はあがる。司令官は不機嫌となる。
副官は空気を読んですかさず言った「恐るべき兵器だ!司令と副官の信頼関係を無力化する。」
司令官と先任、兵隊たちは大いに笑った。

司令は三つめのポップコーンを手にしながら言った「日本には一目おいたほうが良いな。」と今度は上手に仕上げた。
皆で「ザ・ミール(平和)!」と乾杯した。抱腹絶倒の夜だった。
この日ジャズポップコーンは抑止力となった。
かくして、日ロ友好は保たれている。
翌日の出発のとき大量の軍用糧食を持たせてくれ、総出で見送ってくれた。
有限会社クローバーにノーベル平和賞を授与したい。

僅かに100円の商品であるが、時に厳しい自然環境の中で絶大な効果を発揮する。
チームをまとめる一品であり、潤滑剤としてもこれを超える商品にまだめぐりあっていない。
たとえ他の荷を減らしてでも必ず持参する。

注:焚き火での使用は熟練を要する。ガスかガソリンなどのストーブでの使用を推奨する。

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