旅行代理店ノマドのサハリン旅行を中心としたロシア専門部門「ロシア・セクション」

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RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第20話 専 門 家(上)

2007.02.18

計画経済から市場経済へ大転換した頃の話である。

ロシア人通訳とやり取りをした方なら経験されていると思う。彼らがよく使うフレーズだ。
ロシア語では「スペツアーリスト」、英語ではご存知の「スペシャリスト」だ。
例えば商談中に「市内観光の行程・時間配分を検討したい。」ともちかけると、決まって「市内観光の専門家がいる。心配ない。」(どんな専門家?と思うがグッと言葉を飲み込む。)「すぐ呼ぶ。」となる。専門家が来て紹介をされると驚く、「州政府の都市計画担当副知事です。」とか「釣りの情報が欲しい。」には「適切な専門家がある。すぐ来る。」来られると「ロシア科学アカデミー、天然資源調査研究所主任教授です。」とかである。
、、、、畏れ入ることこの上ない。

ある訪ロ代表団の事前調整のためにウラジオストックを訪問した。
その際、沿海州政府から観光分野について相談を受けたことがある。、、、、、
(ソ連時代、当地の州都ウラジオストックは、極東太平洋艦隊総司令部や極東軍管区総司令部を置く当時最も緊張感のある軍都であり、外国人はもちろん立ち入り禁止。ロシア人でさえ厳しい管理下におかれた。
「観光」とはおよそ無縁な街・州であった。今で言うところの北朝鮮の拠点軍港に立ち入るに近いイメージと思う)

そんな州が時代にあわせ観光振興を行うという。担当者は「どんな観光が考えられるか?」といきなり問う。当時の私もエンカイシュウなる響きはNHKの天気予報で聞くくらいのものであり、私の「観光資源はなんだ?」の問いに「観光の シ・ゲ・ン???」こんな状態であった。
そこで、私は僅かな記憶から「貴州は歴史的に、また世界的に有名なアルセーニエフによる名著『デルス・ウザーラ』のまさに舞台となった地ではないですか。」とかました。これには担当者相当喜んだ。「そ~なんです。わが州には世界に誇るカンコウ・シ・ゲ・ン「デルス・ウザーラ」があるんです。」「世界のクロサワが映画にもしたんです。」と一気に盛り上がった。
後に展開する私の試練はここから始まった。

担当者は矢継ぎ早にプロモーションのキーワードを連発する。「アルセーニエフの足跡を訪ねて。」「デルス・ウザーラの道」「デルスの子孫が暮らす村」etc,,,,。
担当者は話しながらどこかに電話をかけまくっている。一息ついたところで、「ゴルゴさん、週末のご予定は?」私は正直に「帰国便の日まで空いてます。」と云ってしまった。彼は一言「オーチン ハラショー。」と言ってまたどこかに電話した。
彼は私に向き直り真顔で言った。「我々沿海州政府では、か・ね・てより郷土の誇るべきデルス ウザーラに着目しており、「観・光・シゲン!」として広く世界に発信したいと考えておりました。ついては日本の観光会社を代表するノマド社のゴルゴ氏に、当地の専門家と共にデルスゆかりの地を訪問してもらい観光開発のための助言が欲しい。全ての費用は沿海州政府が負担する。」
私は「日本代表。」「全額相手もち。」の文句に不覚にもグラッときてしまった。

次の日の早朝、ホテルに通訳が来た。「3泊4日でシホテアリン山域にタイガの専門家と一緒に行ってもらいます。必要なものは全部用意してますから何も持たなくていいです。」
私は車に乗った。
着いたところに驚いた。「陸軍××駐屯地××補給所」。
紹介された専門家はなんと長距離偵察何とかの10数名のチームであった。
確かに靴も、服も、ザックも全部あった。他にいろんなものを持たされた。
思うに閉鎖都市の軍都にアウトドアガイドがいるはずも無く、登山用品のレンタルなどあるはずもなかった、、、。この専門家達と俺はいったいどこに行くんだ?

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