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RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第23話 在庫5回転

2008.10.30

ゴルゴ、前回のコラムから約一年ぶりの登場となります。
言い訳・・・。
ちょうど一年前、北海道洞爺湖サミットの仕事に着手することとなり、G8の2カ国の仕事に従事していたことから先月まで全く更新に頭が回りませんでした。そんな折、「コラム楽しみにしているのに、、、。」と思いがけない方からお声掛けいただき、「ウッソー!」と正直驚きました。自分ごときの駄文を「読んでくれている人がいる。」「楽しみにしている。」そんな方がいるとは全く予想だにしないことでしたので本当に驚きました。
「駄文なりに始めたことなら継続しなきゃ。」と意識を新たにしました。今後はちょくちょくUPしてまいります。
そこで前回のコラムを見直してみると、なんと傲慢にも予告編にクイズまで出してるじゃないですか!なんという恥知らず。誰も読んでないと思って勝手なことしてました。失礼しました。今後は少し緊張感を持ってやって参ります。

さて、早速前回のクイズの正解です。車のメーカーはすべてトヨタ。車名は以下の通り。
「マルクドゥバ」=「マークⅡ」、「ヒルクススルフ」=「ハイラックスサーフ」、「ヒエイス」=「ハイエース」、「チャザア」=「チェイサー」、「サムリチティリワダー」=「カムリ4WD」(ロシア人は英語をローマ字読みすることが多かったです。)以上5問でした。配点は各20点、80点以上の方は「ゴルゴ流ロシア検定」準二級を認定する。
そして大胆にも予告までしておりましたタイトル。
「驚愕!在庫5回転ある商品が北海道から消えた。」を以下にこそっとUPさせていただきます。

<<在庫5回転>>

先に客船チャーターロシア人観光団の話を書いた。
「車が売れた。」だったと思う。それはそれで充分驚いた出来事だったのだが、それでも当時は「お一人様一点、お持ち帰りに限り。」の分量だった。
そんな時代に実は一人3台も4台も買っていった大ヒット商品がある。ある年の12月のことだった。

 「ポータブル石油ストーブ。」巷「ポット式」とか「芯式」とか言われているものである。
 そして、ガスカートリッジの「カセットコンロ」である。

たぶんここまで読みすすめられた方の多くは「寒い国から来た人だもの、ストーブやコンロくらい買ってくだろ、驚くほどのことじゃないだろ。」とお思いのことと推察する。
 確かに普通の国ならそうだろう。しかしロシア(ソ連)である。社会主義である。計画経済である。

実はロシア(ソ連)には灯油やガスなるものが売っていなかったのである。国は国民に教育・医療を保証し、住宅には暖房・給湯をほとんど無料で各戸に供給していた。そのシステムは街にひとつの大きな熱電源供給公社を置き。重油、石炭による火力発電システムにて「電力」を。そして火発で得た大量の二次エネルギー「スチーム」をパイプラインにて各戸に供給し「暖房・給湯」を行っていた。故に、ロシアでは灯油どころかストーブもガスレンジも売っていない。各家庭は今でいうところのオール電化住宅であり、北電あたりが聞いたら「実にうらやましい夢のような国。」と言うに違いない街づくりであった。
しかし時代は市場経済移行への大混乱期である。民営化にシフトする熱供給公社も炭鉱も精油所も大混乱の極みにあり、肝心の重油・石炭の熱供給公社への搬送が滞った。季節は初冬。市民生活は一気に縄文時代である。
 そんな時の客船チャーター小樽である。ホームセンターにはロシア人が押し寄せた。乗員乗客200人が家族のために、父母のために、息子夫婦のためにと3台も4台も買い求めた。当時¥7,980の確か白いコロナ石油ストーブと記憶しているが、あっという間に売り切れた。カセットコンロもガスカートリッジ売り切れた。ホームセンターの担当者は何か分からないけど「特需だ!」と道内の系列店、卸、メーカーに電話を掛けまくってかき集めた。わずか4日間の間に北海道の在庫がすべて小樽に集まった。出港の日を迎え嵐のような特需は去った。(お店のご担当の方はたぶん何が何だか分からなかったであろうと思う。)

ここで賢明な読者諸兄はお気づきであろう。「灯油が無いのに、なぜ石油ストーブを買う??」 もっともな疑問である。
ロシア人は帰国後すぐに灯油を探した。そしてすぐに見つけた。
ストーブ購入者全員がウオトカを片手に空港へ走ったのである。灯油=ケロシン=ジェット燃料(JET FUEL A-1)。みんな暖かな冬を過ごしたそうだ。
この年の冬、ロシア極東では悪天候が報告されているわけでもないのに、なぜか航空機の離発着回数が大幅に減った。今もってその理由は謎である。

 (蛇足ながら、この年の冬から韓国のガスカートリッジメーカーの株価が上がった。今や極東全域にその商圏を広げている。日本はエネルギー輸出国になるチャンスを逃した。実に惜しい。)

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