旅行代理店ノマドのサハリン旅行を中心としたロシア専門部門「ロシア・セクション」

ロシアの旅行の手配から観光まで

RUSSIA SECTION

【ノマド|ロシアセクション】

旅のコラム

第32話 出たとこ勝負!(上)

2009.09.26

ずいぶん昔の話である。恐縮である。
オプショナルの小旅行を極東で組んだ。確か友好交流系の大型代表団のサイドトリップと記憶している。全体のプログラムがあまりに順調に消化された為ある分科会の最終日が図らずもポッカリとあいてしまった。場所が場所だけに自由行動というわけにもいかない。

 急きょ追加プログラムを企画して提案しなければならない。当然かなりの希望者が出るだろう。最低10名、最大25名だ。案の定、分科会全員の25名の希望者がでた。時計の針はすでに21:00を過ぎていた。
それからが大変である。車両の手配・ドライバー・通訳・昼食弁当・アトラクション・観光プログラム・・・・・。すべての手配は翌朝8時以降にならないと着手できない。しかも許される時間は50分だ。手前みそだが当時のロシアでは驚異的なことである。大混乱期のロシアだった。
バスを探し、ドライバーを確保し、通訳は伝手を頼み、弁当をホテルのオーナーに頼みこみ、アトラクションと観光プログラムは出たとこ勝負の泥縄手配だった。
 「ロシアの大自然満喫ピクニック」のそのタイトルに苦心が伺えるだろう。この時まだ具体的なプログラムはなく、頭の中の引き出しを手当たり次第に引き抜くだけだった。
バスが来た。そして弁当を受け取った、その時は来た。「絶望!!」の二文字が視界いっぱいに広がった。
 まるでゴミ袋のような黒いビニール袋に干からびた黒パンとチーズが2枚、薄くそいだようなサラミが2枚、トマト1個、紙パックのジュースが一つ、無造作に放り込んである。最初生ごみかと思った。それが28袋。ランチボックスに入っているわけでもラップに包まれているわけでもなかった・・・・。「大自然ピクニック」が一瞬で「難民キャンプ」に変わった瞬間だった。
 気を失ったのはキッカリ3秒だった。次にはレストランに向かって走りだしていた。
自分は知っていた。事ここに至って誰かに何か文句をいったところで何も解決しないことを。そして頭の中で右往左往していた時に「ピクニック」のフレーズがいきなり形になった。厨房でジェーブシカに叫んでいた。「器、スプーン、コップとショットグラスを人数分。お玉、塩、お盆5枚にテーブルクロス5枚。ヤカンに集乳缶の水1本!」10分で用意しバスに飛び乗った。そしてドライバーに開口一番「自由市場に行ってくれ!」
 お客様には「当地で最初に開かれた自由市場です。皆さん見学しましょう!」30分の時間ができた。通訳には「ジャガイモ・玉ねぎ・人参各1kgにジャムと紅茶を買ってくれ。」と命じ、ドライバーには「ホーロー引きのバケツ1個とウオトカ4本だ。」そして自分は屋台のピロシキを屋台ごと買った。(保温箱とスタンド。おばちゃんには必ず返しに来るから、と頼みこんでのことだった。)バスは30分後に何事もなかったかのように出発した。
「ピクニック・大自然・とんでもない弁当」のフレーズが頭の中では出口を求めて飛び交っていたが、ドライバーには確信を持って告げた。「まずレスノイエの河口に行ってくれ。そのあと順次指示する。」

【続く】

Page top